耕作放棄地からの復旧活動
三川ファームで管理する田畑は、耕作放棄地の復旧を経て作物栽培がはじまります
無肥料栽培
代表の松本は異業種から農業に参入し、「景観を考えた農業スタイル」を推進しています。このスタイルは、里山本来の機能を取り戻し、獣と人との境界線を明確にすることで、人と自然との棲み分けに貢献するものです。さらに、山には豊かな地力があり、恵みの水が流れているため、肥料を使用せずとも作物が育つ環境が整っています。山から流れ込む落ち葉を含んだ沢の水が、肥沃な大地で稲を育ててくれます。
耕作放棄地の保全活動
松本の前職は酒屋で、2015年からは新潟の棚田(上流)と酒蔵(下流)を水流(川)に沿って結びつけ、原料の米から酒という完成品を生み出す仕事をしていました。趣味でイワナ釣りをして川に入る際、通り過ぎる里山の耕作放棄地が年々増えていく景色を目の当たりにし、「耕作放棄地をなくしたい」「美しい棚田を保全したい」と強く思うようになりました。そこで、酒造業を通じて棚田の保全活動を5年間続けてきました。
そして2020年、松本は自ら農業者となり、本格的に美しい棚田のある里山の風景を取り戻したいと考えました。20年間携わった酒造業界を退き、新潟県阿賀町綱木(旧三川村)で新規就農を始めることにしたのが、そのきっかけです。
2020年の復旧活動
最初に、5年間耕作放棄されていた田んぼの一部、約1反の復旧作業が完了しました。
その後、毎年復旧範囲を広げ続け、3年後の2023年には、10倍の1町分の田んぼを復旧することができました。
2020年8月のお盆明けから、耕作放棄地の復旧作業を開始しました。2メートルを超える草を刈り、多年草は根から丸ごと抜き、木も根ごと取り除きました。これらの除草作業は、薬剤を一切使用せず、すべて手作業で行いました。
その後、ホンダこまめ(2馬力)の耕運機を使い、何度も耕耘を繰り返しながら雑草の根を切り、大きな雑草は畦に積み上げ、そのまま2年ほどかけて土に分解されます。こうした地道な作業を重ね、ついに稲作が可能な状態まで復旧することができました。
稲作の開始
翌年の2021年の耕作状況
育苗
田植え
年が明け2021年4月に中古で購入した三菱トラクター15馬力(棚田用)で耕耘を行い、代掻き後5月22日に最初の耕作放棄地の復旧田1反に従来コシヒカリの田植えが終わりました。
雑草対策
機械と手作業による除草作業を行います。田植えから5日目に1回目の中耕除草を行い、その後は1週間ごとに除草を繰り返します。江戸時代に考案された多数回中耕除草法では、4回から8回の除草が推奨されており、今年は4回を目標にしました。特に、小菜葱が芽を出した直後に除草することが労力の軽減につながる重要なポイントだと言われています。そのため、5月末から7月にかけては除草作業に集中しました。素足で田んぼに入りながらの作業は、土との一体感を感じる重要な時間でもあります。
同時に、4反ほどの隣接する耕作放棄地の復旧作業も進めました。夏が進むにつれ雑草が増えるため、早い段階で先を見越し、周辺の耕作放棄地の復旧作業に取り組みました。来年は5反分の田んぼで、無農薬・有機栽培のクラシックコシヒカリや亀の尾を栽培し、可能な限り稲架掛けによる天日干しを行う予定です。
順調に育つ8月の田んぼ
実りの秋
棚田と稲架掛けの風景
刈り取りと脱穀の様子
籾を唐箕で選別し精米を経て白米のご飯に
唐箕を廻して風の力で籾を選別します。手作業なのでここで充実した籾を選別します。
1反分(約300坪)を唐箕で選別するのに10時間位かかりました。
その後グレーダーで玄米1.85ミリ以上を合格とし、小さいサイズはくず米として選別します。その後、玄米を白米に精米し、ようやくご飯として食卓に上がれます。